日本における大麻の現状
日本で非合法である理由(大麻取締法)
最近、芸能人の大麻使用のニュースが相次いで報道されたり何かと騒がれてますが、なぜ大麻使用がだめで、何がだめなのか、皆さんはその理由をご存じでしょうか。そこにはかなり深い理由があるのです。
まずは、日本で大麻が規制されている法律。これは「薬物五法」(薬物を禁止する主な法律)の1つで「大麻取締法」が当てはまります。この法律によると、大麻とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品を言い、もっとも大麻草でも、①成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)②大麻草の種子及びその製品は規制対象から除かれています(第1条)
なお、大麻取締法に違反した場合の罰則は以下となります。
———————————————————————————————————
輸出入(第4条1項)、栽培(第3条1項)
非営利目的の場合:7年以下の懲役(第24条1項)
営利目的の場合:10年以下の懲役刑。情状により300万円以下の罰金が併科される可能性がある(第24条2項)
譲渡、譲受、所持(第3条1項)
非営利目的の場合:5年以下の懲役刑(第24条の2第1項 )
営利目的の場合:7年以下の懲役刑。情状により200万円以下の罰金を併科される可能性がある(第24条の2第2項 )
———————————————————————————————————
つまり、大麻の輸出入、所持、栽培、譲受、譲渡等で違法行為となっており、栽培に関しては、許可を受ければ大麻研究者、大麻栽培者は、一定の目的のために大麻の栽培等が許されます(第2条1項)。
日本における大麻の古来からの役割
上記に述べたように、大麻の所持・輸出入などは違法行為ですが、実は大麻の自己使用に関していうと、法的に処罰の対象とはなりません。それは、日本では大麻が古来から宗教的儀式や薬草や衣服として使われたり貴重な資源として活用されてきた歴史があります。実は七味唐辛子の中には大麻の種子が利用され続けていることをご存じでしたか。
このように、大麻には活用する必要性があるので、厳密にいうと大麻草でも成熟した種子は規制の対象にはなりません。これらの部分は、所持したり譲渡してもなんら問題ありません。
合法成分と非合法成分(CBDオイルとかは売られていて、非合法な成分が含まれるからダメ)
先に述べたように、同じ大麻でも合法な部位と非合法な部位がありますが、これは含有成分によるものです。禁止とされている成分はTHC(テトラヒドロカンナビノール)と呼ばれるもので、精神依存性や幻覚作用、認知症リスクの高まりなどが研究結果として指摘されています。ただ、THCを含む大麻が合法化された米国などでは、大麻をうつ病や食欲不振、がんの化学治療に伴う痛み止めやストレス軽減など、医療目的での活用も進んでおり、ポジティブな効用も指摘されているのも事実です。一方、合法成分であるCBD(カンナビジオール)という成分は日本でも合法なものになりますが、その効用としては、向精神作用はなく、リラックス効果や夜ぐっすり眠れる、痛み止めとして機能するなど、THCよりも安全性が高いのが特徴だといわれています。
大麻の用途(医療大麻と娯楽大麻)
このように、娯楽大麻に関してはリスクもあるため、否定的な声は多いのはたしかです。ただし、医療用大麻としては日本でも徐々に一般的になってきており、今後もその利用は広がっていく様相を呈しており、具体的には、サプリメントやCBDオイルとしてネットショップなどでも販売され認知も広がってきています。上記の通り、日本でも、大麻はすでに身近な存在になりつつあるものであることはお分かりいただけたと思います。
海外での大麻合法化事例
海外での大麻合法化の背景(カナダ・ウルグアイ)
ところで、海外ではこの数年で、多くの国や州で大麻が合法化している事実はご存じでしょうか。国のよって合法の線引きは微妙に異なりますが、ここ数年で多くの国が大麻を解禁しています。例えば、大麻先進国といわれているのがカナダは2018年に合法化し、今ではタバコやお酒のように一部の国民の生活にとって欠かせないものになってきつつあります。
カナダの合法化の背景(税収と経済活性化)
では、カナダではなぜ大麻の合法化に踏み切ったのか。その理由はいくつかあると言われていますが、大きな理由は税収面だと言われています。実はこうした多くの国々では、合法化する前から常套的に吸引されてきた歴史があります。その結果、大麻を販売する闇市場にお金が流れるという事態に陥ったのです。例えば、カナダ政府の分析では、年間約70億カナダドル(約6000億円)の違法大麻の売り上げが犯罪組織に流れ込んでいるという報告をしています。これを非刑罰化するだけでは、この闇市場が潤うことになりかねないので合法化して政府が流通を管理することで、闇市場を縮小させて税収を上げる道を選びました。つまり、大麻を手放しで容認しているわけではなく、闇市場への金銭流入を阻止するための苦渋の決断だったのです。もちろん、大麻の依存性への対策も行いながらの決断ではありました。
ウルグアイの合法化の背景
また、世界で初めて大麻合法化した国がウルグアイです。こちらもカナダの事例と同様、闇組織への資金流入を無くし、麻薬密売人からの収入を取り上げることで治安がよくなるとの考えからでした。さらに、質の良い大麻を国民が合法的に製造もしくは取得できるようになれば、安全面や健康面としてもポジティブに働くとも考えました。また、ウルグアイ政府には、大麻と同等もしくはそれ以上に中毒性があり有害なアルコール、たばこが合法である一方、大麻は違法であったことを解消したいという思いありました。その結果、2013年に世界初の合法化に踏み切りました。もちろん、国内外から賛否あり運用当初は警察の理解不足により誤逮捕といったこともありましたが、次第に問題もなくなっていき、2020年2月時点では、登録ユーザーが薬局の利用者40,563人、個人の自宅栽培8,141人、158の大麻クラブとその4,690人の会員がいることがわかっています。
大麻が合法化したらできること
海外の大麻活用事例(燃料や家の壁)
ここまで、大麻が日本で非合法である理由、海外での合法化の背景など「ドラッグとしての大麻」について触れてきましたが、では実際に大麻が日本で合法化されたらどんなメリットがあるのお伝えしていきたいと思います。
実は大麻は資源として相当優秀であることがわかっています。例えば、大麻の種。これは食品としてみると、必須脂肪酸がバランスよく大量に含まれているため、健康によいと言われているほか、ほか化粧品や石鹸などにも使うことができます。加えて驚くことに大麻の油はいまや石油に代わるエネルギー資源としても注目されています。しかも、石油とは違い、短期間で再生が可能、かつ枯渇しないバイオマス資源です。しかも、大麻は栽培自体は簡易で、そこまでの手入れや農薬など必要なく、しかも気候にも依存せずどこの場所でも大きく育つ植物なのです。次に茎、茎は繊維として利用でき、木材の4倍ほどの繊維パルプが含まれていると言われています。古来から「麻」として衣類や紙などにも使用されてきたことはご存じかもしれないですが、実は建物の壁になることもわかっています。それは「ヘンプクリート」と呼ばれ、エコな住宅建材として注目され始めています。このヘンプクリートはカビや腐敗に強く耐火性や耐久性もコンクリートを凌ぐと言われています。また、コンクリートをつくるときに排出されるす二酸化炭素が発生せず、むしろこれを吸収する作用があります。さらに、大麻からはプラスチックを作ることも可能です。このプラスチックは、従来の石油からつくるものと強度は同等ながら、土の中で分解されるバイオプラスチックになります。このように、大麻は資源として環境に非常に優しい素材なのです。
大麻の合法化の今後
大麻合法化の可能性(海外では続々合法していってる)
上記のような背景も重なり、現在多くの国で次々と合法化もしくは規制緩和が進んでいます。具体的には以下の国々が一例です。
◎2020年時点で大麻合法化・非犯罪化した国の一例
【ヨーロッパ】
フランス・スペイン・オランダ・ルクセンブルク・イタリア・チェコ・ポルトガル・ドイツ・
【北アメリカ】
カナダ・アメリカ43州(嗜好用:10州、医療用:33州)・メキシコ
【南アメリカ】
アルゼンチン・ブラジル・ジャマイカ
【アジア】
インド・タイ・韓国
【オセアニア】
ニュージーランド・オーストラリア
【アフリカ・中東】
南アフリカ・イスラエル
※2020年4月時点
国によって背景や理由は様々ですが、ここまで多くの国々が規制緩和に踏み切っています。今後も世界各国では、緩和の方向性が緩やかではありますが進んでいく様相を呈しています。
まとめ(大麻の今後に注目)
このように、海外諸国では大麻に対する見方が徐々に変わってきている事実があります。今、日本ではSDGsなど持続可能で地球に優しい社会づくりに舵を切っている背景も鑑みると、規制緩和に踏み切る可能性もまったくないわけではないと筆者は考えています。もちろん一般に言われている依存性などのリスクもあることも事実ないわけではないですが、それ以上に大麻を合法化することで解決できる問題もあるということを知っていただけたら幸いです。今後の日本での大麻をめぐる議論から目が離せません。